2021年度一級建築施工管理技士二次試験総評経験記述

2021年度1級建築施工管理技士二次試験総評経験記述

 

【問題1 経験記述】

例年の出題順序からの予想では、「建設副産物対策」についての出題が順当とされていましたが、一昨年に出題された「品質管理」についての記述が求められました。出題テーマにつきましては、今回の様に、順当なローテーション通りにならない例が過去にもありますので、前年に出題されたテーマ以外の二通りのテーマについて、準備をしておくことが必要と思われます。

尚、初めての設問形式として、「1-③」では「発生が予測される欠陥又は不具合」、「1-➃」では「確認方法又は検査方法」の記述をそれぞれ求められましたが、品質管理項目を定め、それらを実施するためには避けて通ることのできない事項であるため、解答はし易かったのではないかと思われます。

 

【問題2 仮設・安全】

全て過去問からの出題でした。
・仮設ゴンドラ→ H29
・場内仮設事務所→ H25 H21
・工事ゲート(車輛出入口)→ H23 H17

上記が過去の出題歴となります。3テーマともに、記述し易いテーマであったと思われます。

 

【問題3 工程管理】

例年通りネットワーク工程表の出題でしたが、設問3と設問4はともに、難しい問題でした。ここで時間をロスしてしまった方もいらっしゃった様です。工程管理をする上での応用能力が問われましたが、次年度以降もこの傾向は続くと思われます。

 

【問題4 躯体施工】

全て過去問からの出題でした。
(〇印→適当な語句の記入、◎→留意事項の記述)

・既成コンクリート杭の埋込工法→ 〇R2 ◎H29
・柱又は梁型枠の加工、組立→ 〇H30(通常) 〇H26
・コンクリート打込後の養生→ 〇H26 ◎H13
・トルシア型高力ボルトの締付け→ 〇H28 〇H24 ◎H21

上記が過去の出題歴となりますが、「問題2 仮設・安全」と同様に、組し易いテーマであったと思われます。

 

【問題5 仕上施工(五肢択一)】

従来は「誤っている語句を訂正する」出題形式でしたが、今年度から新たに取り入れられると事前公表されていた「五肢択一」形式での出題となりました。

設問数は8問で従来と変わらず、かつ、出題テーマも標準的であったと思われます。さらに、与えられていた選択肢に書かれている内容が受験生へのヒントとなり、正答を選択し易かったのではないかと思われます。

 

【問題6 法規】

前問と同様に、「五肢択一」形式での出題となりました。従来は選択肢が与えられておらず、条文通りの語句を記入しないと正解となりませんでした。今回は選択肢が与えられていることにより、若干、正答に近づき易くなったと言えましょう。

但し、「2-③」「3-⑤」「3-⑥」については、条文を暗記している場合を除き、選択肢を絞り込むことはできますが、最終的に正答肢選択するためには、入念な条文の読み込みが必要となりましょう。従って、今年度の法規の問題も、決して点を取り易い問題であったとは言い難いと言えます。

 

【総評】

試験制度改正後の初めての二次検定となりましたが、

・問題1・問題2・問題4・問題6→ 標準
・問題3→ 難しい
・問題5→ 易しい

上記のような難易度となり、総合的には難易度は標準並みであったと言えます。

2021年度(令和3年度)一級建築士設計製図試験の評価

2021年度(令和3年度)一級建築士設計製図試験の総評

 

設計製図試験実施直後に発表した当会の本年度設計製図試験の講評の内容は合格発表時に試験実施機関が公表した標準解答と「アプローチの取り方が最重要ポイントである」という点で完全に一致

 ・はじめに

級建築士設計製図試験について、平成21年の試験内容の見直しが試験実施機関より発表されて以来、試験課題の内容は、概してより高度な建築計画力を要するものとなってまいりましたが、本年の試験ではその傾向が一層顕著なものとなりました。
すなわち、本年度試験の課題条件においては
先ず敷地におけるアプローチの考え方が比較的難しい判断を要するものであり、それ故にその後の建築計画の適否に大きな影響力を与えるものとなっていることが注意すべきポイントであるといえます。

・本年度の試験課題における最も基本的な重要ポイントについて

この課題の敷地は、東西方向にやや長い長方形の敷地で、敷地の短辺に当たる東側には歩道付の幅員8mの広い道路が接し、同じく短辺に当たる西側には歩道のない幅員4mの狭い道路が接しています。
この課題の主要施設である住戸部門、居住者以外の人が利用するテナント部門(学習塾、カフェ等)及び施設管理部門、駐車場等への
アプローチをどのようにとるのかは、以降の建築計画に重要な影響を及ぼすわけですが、必ずしも決定的な考え方がある訳ではありません。
一般的に建築計画では学科のように正誤が必ずしもはっきりしている訳ではなく、どちらの方が総合的に考えてよりよい案であるかと判断される場合も多くあります。
この場合、学習塾、カフェ等の集合住宅の居住者以外の外部からの人の来るテナント部門のアプローチは、一般的にはやはり歩道付きの幅員の広い東側の道路からとるのが望ましいと考えられますが、住戸部門へのアプローチは、幅員の狭い西側の道路からでもよいと考えられなくもありません。
何故なら、西側の道路の反対側には何戸もの戸建て住宅が建っていることからもこの建物の住戸部門へのアプローチは必ずしも幅員の広い方の道路からとる必要はないのではないかとも考えられるからです。
しかしながら、幅員の広い東側道路の両側には店舗付集合住宅が建ち並んでいることからは、この建物の主要施設である住戸のメインアプローチは歩道付きの幅員の広い東側の道路からとするのがやはり自然で、試験の解答としてはより安全であると考えられます以上から、
住戸部門へのアプローチとテナント部門へのアプローチは共に東側の道路からできるだけ相互の距離はあけてとることとして、他方、西側の歩道のない幅員の狭い道路からは、管理用のアプローチ及び駐車場のためのアプローチをとり、かつ建物の西側には、管理用、駐車場からの出入りのための通用口を設けることがより望ましい考え方であるといえます。

但し、このように長方形の敷地の短辺に当たる東側道路から住戸部門とテナント部門の両方のアプローチをとることは、それぞれのエントランス、エントランスホールを建物の短辺となる東側にとることとなるため、ゾーニングや動線の整理等、この課題における建築計画上の難度は増すことになります。
但し、当会の設計製図の講座では、敷地の短辺方向からの住戸部門へのアプローチと住戸の居住者以外の地域住民のいわゆる外部の人の利用が可能なレストランやコミュニケーション施設等へのアプローチをどのようにとり、ゾーニングや動線をどのように整理するかという練習課題を何度か実施しており、それらに類似した課題と考えればそれほどの難しさはなかったのではないかと考えられます。
なお、この課題において、
住戸部門とテナント部門の関係をまったく別個の施設と考えるか、相互に関係のある施設と考えるかということも、この課題の建築計画上のポイントの一つと考えられますが、住戸部門の住民がテナント部門のカフェ等を利用する可能性も考えられ、また従来の試験課題でも複合施設からなる建物で、それぞれの施設の相互の関係が全くなく単に同居しているだけという課題は過去にもなかったことから、やはり住戸部門とテナント部門は、住戸部門のセキュリティに留意しつつ、内部で相互の連なりを考慮する必要があると考えられます。 なお、その場合、防火区画としての異種用途区画の必要性についても留意しておく必要があります。

・まとめ

以上のように、本年度の試験課題では建築計画を考える上での諸々のポイントがある中で、先ず最初に考えるべき建築計画全般に大きな影響を及ぼす重要なポイントとして、上記のような建物の諸々の部門へのアプローチをどのように計画するかということが、特にこの課題では重要なポイントであると考えられます。
何故ならば、この課題の条件では、アプローチをどのようにとるべきかという考え方は一つではなく、いくつかの考え方があり得る訳で迷いの生ずるところですが、採点のポイントがどのようになっているか確実に推測することは受験者には当然できませんので、
仮にそれによって建築計画上の難度が高くなっても、試験の解答案としてはあくまでもより望ましい安全側の解答案に考えておく必要があるといえます。
このように考えると、本年度の試験課題は、一見平易なもののようにも考えられるものの、
合格を確実にするためのレベルの解答案を作成するためには相当に高度な建築計画力を要する難度の高い課題であるとも考えられます。
以上が本年度の試験課題における建築計画を考える上での最も基本的な重要ポイントであり、特徴であるともいえると考えられます。

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